有機農法生産者のご紹介

はまなす生産組合

青森県

有機野菜で、健康寿命をまっとう

「有機の農産物を食べれば長生きできる」とは言えませんが、健康に寿命までまっとうできるのではないかと考えています。有機だから栄養価が高いかというとそうではなく、計測すると一般的な栽培の農産物と大差ないこともわかっています。でも、自然農法の作物は細胞の密度が濃く、食べたときに身体に吸収される栄養成分量が違うと私は思っています。

具体的には、現代農法は作物の実だけ見ています。無理に養分を入れるため、弱く育ち、害虫がつく。それを農薬で徹底的に抑えます。我々の栽培は実ではなく木を見ます。木が健康に育てば、子孫を増やすための最終的な形として、すばらしい実を残します。実にはミネラルなどの大切な栄養を蓄えます。有機栽培では、そういった質のいい実をいただくことができるのです。

有機農業は管理技術、自然農法は土作り

私たちは土作りを基本と考え、農薬・化学肥料に頼らず、米糠・菜種粕・大豆粕・魚粕などの10種類以上の有機質肥料を自ら成分設計して使用しています。良質の堆肥で地力を高めて、作物本来の生きる力を引き出すのです。

昔ある講演で酸性雨のことを聞き、リトマス試験紙で雨を計ってみたら、葉っぱがやけどをするような数値でした。それで、植物本来の生命力を生かす有機栽培に切り替える決意をしました。

有機農業は管理技術、自然農法は土作りの基礎知識で、組み合わせればすごい技術になります。30年ほど前に有機や自然農法を勉強し始めたとき、それまで習ったり体験して覚えたりした常識のすべてが180度ひっくり返りました。

いちばん辛かったのが自分自身との戦いです。タバコやお酒を断つ際に禁断症状が出るように、農薬や化学肥料をやめるのにも大変なストレスがかかります。私の場合、3年は収穫ができないと覚悟を決めて過ごしましたが、専業農家として真剣に取り組んでいる人ほど、身についた常識にとらわれ、なかなか覆せないようです。それを乗り越えた人だけが有機農業に成功します。

有機農業に切り替えて、目で感じる技術が鍛えられました。微妙な違いを感じとって手入れをしていく盆栽の繊細な感覚と同じです。

自然のサイクルのままに

自然を感じ、変化を観察して予測すると、アイディアが生まれます。ハウスの一画に無農薬・無化学肥料の花が植えてあるのですが、そこは虫の棲み処になっています。害虫も益虫も居ます。

薔薇はうどんこ病に弱く、同じハウス内のキュウリより先に病害が出ます。慣行栽培では病気が蔓延してたいへんだと考えますが、私のハウスでは病気が必要以上に広がることはありません。害虫や土壌微生物、空気中の菌、雑草など、生き物が共存し、生態系の調和がとれているからです。結果として、キュウリは自然のサイクルの中で守られているのです。

害虫は自然界のシステムにおいて、弱者を淘汰する役割を果たしています。その害虫が今度はエサになります。生態的に弱く育ってしまった作物には害虫がたくさんつきます。健康に強く育っても害虫はつきますが、作物も生き物ですから、殺されるのを黙って待っているわけではありません。植物には防衛本能があります。彼らは次の世界に子孫を残すという役割を守るため、害虫を何らかの方法で跳ね返す能力を発揮します。それが自然に育った作物の強さです。