【論文紹介】インスリン抵抗性による認知機能低下?


全国の65歳以上の高齢者において、認知症有病者数は約462万人と推計されています(2012年時点)。
これは65歳以上の高齢者の7人に1人(15.0%)ですが、2025年には約700万人に増え、5人に1人(20%)になると見込まれています。

一方、インスリン抵抗性はインスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)の発症要因のみならず、メタボリックシンドロームのリスク因子の一つであり様々な疾患に影響していると考えられています persevere

今回は、日本でも増加している疾患として注目されている「認知症」が「インスリン抵抗性」と関連しているかもしれない、という調査を行った論文をご紹介します。

 

 

 

 

 

 

●インスリン抵抗性は、認知機能低下を早めるかもしれない

インスリン抵抗性は、認知機能の低下に関連するようだという内容の、イスラエルにあるテルアビブ大学からの研究報告(Journal of Alzheimer’s Disease, vol. 57, no. 2, pp. 633-643, 2017)です。

【目的】
認知能力の低下における、インスリン抵抗性の役割はまだ解明されていない。
インスリン抵抗性のある心血管疾患の高齢者において、認知能力の変化との関連を追跡調査。

【参加者】
冠動脈性心疾患のある489人(57.7歳±6.5)

【方法】
空腹時血糖値と空腹時インスリン値で算出した恒常性モデル評価(HOMA-IR)を用い、インスリン抵抗性の有無を評価。
*HOMA-IR指数が高い=インスリン抵抗性を有する。
認知機能はコンピュータ化したテストバッテリー(記憶、実行機能、視覚的空間処理能力、注意)を用いて評価。

【結果】
HOMA-IR指数の上位1/4に位置する被験者は、残りの3/4の被験者に比べて認知機能が低下するリスクが高かった。
そして、心血管リスク要因や潜在的交絡因子を調整しても、これらの関連は減少しないことが見出された。

<論文要旨>
http://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad161016?resultNumber=3&totalResults=36&start=0&q=Goldbourt&resultsPageSize=10&rows=10

これは日本人による追跡調査ではありませんので、この結果をそのまま日本人に当てはめることはできませんが、インスリン抵抗性は筋肉・脂肪・肝細胞などでのグルコースの速やかな吸収が妨げられることで血糖値が上昇しますが、それ以外にも様々な影響があることがわかってきています。

その一つとして、今回の調査では実行機能や記憶の認知低下が加速する可能性があることが示唆されています。

この調査結果に関して、主任研究者のタンネ・ダビデ教授は

「これらは興味深い発見である。なぜなら、高齢者において、認知低下および認知症のリスクが高い人を特定するのに役立つ可能性があるからである」

「インスリン抵抗性は、生活スタイルを変えたり、特定のインスリン感作薬を使用したりすることで、予防および治療が可能であることがわかっている。運動、バランスのとれた健康的な食事を続けること、体重に気を付けることは、インスリン抵抗性の予防に役立ち、年をとっても、脳が保護されるのである。」

とコメントしているそうです relieved

 

 

 

 

 

多くの認知症性疾患では、その原因は不明です。

今回の調査報告では、認知症を発症するリスクを判断する際に、HOMA-IR指数が活用できる可能性があるということも示唆しています sparkles

また他の研究では「血糖コントロールやインスリン抵抗性の改善は、認知機能の低下が加速するリスクを低減できる可能性がある」ことも言及されています open_mouth

認知症を予防することは、原因が解明されていない分、難しいとは思いますが、タンネ・ダビデ教授が述べているように、インスリン抵抗性を改善することは日々の生活の中で意識して行うことが可能です smile

 

インスリン抵抗性の改善が期待できる方法をいくつかご紹介します bulb

●インスリン抵抗性の改善の為に意識したい習慣 blush
・運動習慣
・食事の内容、摂り方、時間の見直し
・(過体重の場合)体重の減量
・生活習慣の改善(睡眠、飲酒、喫煙など)

 

 

●インスリン抵抗性に効果が期待できる栄養素 sparkles
・カルシウム
・マグネシウム
・プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌)
・フラクトオリゴ糖(プレバイオティクスとして)
・CoQ10
・カテキン
・プテロスチルベン(メチル化レスベラトロール)

 

食品としては「ブロッコリースプラウト」や「ショウガ」の摂取でインスリン抵抗性を改善できたという研究報告もありました flushed

 

認知機能の低下は、年齢と共に必ず起きることだと思います sweat_smile

ですが、日々の生活習慣に気を付けることで、認知機能の低下を緩やかにできる可能性があると考え、生活習慣の改善を意識し、年齢を重ねても元気に溌剌と過ごせると良いですね relieved

 

(あ)

 

 

内閣府 平成28年版高齢社会白書 (http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_2_3.html
糖尿病ネットワーク メタボリックシンドローム (http://www.dm-net.co.jp/seminar/24_/index_2.php
糖尿病ネットワーク インスリン抵抗性のメカニズムを解明 (http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/025350.php
リンクDEダイエット ニュース詳細 (http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=59254&-lay=lay&-Find
インスリン抵抗性の疫学 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo1958/42/2/42_2_115/_pdf
高血糖がアルツハイマー病のリスクを高める (https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/high-blood-sugar-may-boost-alzheimer-s-risk-701709.html
運動とインスリン抵抗性 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo1958/47/8/47_8_622/_pdf
生活習慣は本当にインスリン抵抗性に影響を与えるか (https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock2005/22/1/22_51/_pdf
国立健康・栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 カルシウム (http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail39.html
国立健康・栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 マグネシウム (http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail33.html
PubMed 2型糖尿病におけるプロバイオティクスの有効性 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26431318
PubMed メタボリックシンドロームを有する対象におけるプロバイオティクスの有効性 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24848793?dopt=Abstract
国立健康・栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 フラクトオリゴ糖 (http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail12.html
国立健康・栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 カテキン (http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail29.html
メチル化レスベラトロールの有効性 (L. Pari & M.A. Satheesh; Life Sci, 79,641(2006))
国立健康・栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 CoQ10 (http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail40.html
国立健康・栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 ブロッコリースプラウト (http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail2160.html
PubMed 2型糖尿病患者における生姜が血糖値、およびインスリン感受性に及ぼす影響 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23496212?dopt=Abstract