妊婦さんと魚油の関係


2021年3月に「妊産婦のための食生活指針」が「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」に改訂され、
中でも「母体の栄養不足や低体重」が問題視されています💦

もちろん、「高栄養食を取らなければならない」ということではありませんが、「どのような食べ物」を摂取するかによって、赤ちゃんの発育にも影響が出てくるのです。

様々な栄養素の摂取を勧められている中、今回は「妊娠中の魚油(EPA・DHA)摂取」について紹介します!!

EPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)とは

EPA・DHAはイワシやサバなどの青魚のに含まれる体内で合成できない不飽和脂肪酸です🐟🐟🐟
(詳しくはこちら:脂肪酸の種類と働き

EPAは中性脂肪の増加による動脈硬化脂質異常などの改善に役立つ成分として、特定保健用食品や機能性表示食品にも利用されており、DHAは、記憶力や言語能力などの認知機能行動能力にも好影響をもたらすといわれています。

妊婦中のEPA・DHA摂取による効果

妊婦さんとEPA・DHAの摂取について参考にしたい論文を紹介します!

妊婦さんの魚食・オメガ3脂肪酸摂取と乳幼児の神経発達

生後6か月81697組と1歳77751組の母子ペアを対象に、魚の摂取量で5つのグループに分け、一番少ないグループと比較して「神経発達の遅れ」の関連を検討しました。
子供の神経発達の指標は、生後6 か月と1歳時点の質問票の回答から「コミュニケーション」「粗大運動」「微細運動」「問題解決」「個人・社会」といった5つの項目において神経発達の状況を点数化し、マイナス2 標準偏差以下の得点だった場合を「神経発達の遅れ」と定義しました。
その結果、妊娠中の魚の摂取量は、6カ月での微細運動の遅延リスクの減少、および1年で微細運動と問題解決のリスク減少と関連していることがわかりました。
Hamazaki K, et al.,Japan Environment and Children’s Study Group. Am J Clin Nutr 112(5); 1295-1303, 2020

魚食・オメガ3脂肪酸摂取と妊婦さんの抑うつ

日本で現在行われている「子どもの健康と環境に関する全国調査(通称:エコチル調査)」のデータ(8-9万人)を使って魚食と抑うつとの関連を調べた結果、妊娠期間中では、前期ではそれほど関連はありませんが、中後期でやや魚を摂っている方で抑うつリスクが低減し、産後1か月でも抑うつリスクが低減し続けました。
また、生後6ヶ月、1年後でも調べてみましたが、魚の摂取と抑うつリスクの関連は強くなりました
Hamazaki K,  et al., Japan Environment and Children’s Study (JECS) Group. Psychol Med. 2020, 50(14),2416-2424

妊娠期のDHA含有サプリメントの摂取による胎児への影響

350名の妊娠20週未満の妊婦さんを対象に出産まで、DHA含有油(DHAとして600 mg/日含有;DHA群)、又は大豆油とコーン油を半分ずつ含有する油(プラセボ群)毎日摂取し続けたところ、DHA群ではプラセボ群と比べ、以下のような結果がでました。
<DHA群とプラセボ群の比較結果>
・在胎期間:2.9日長い
・出生体重:172 g重い
・体長:0.7 cm長い
・頭囲周囲径は0.5 cm大きい
更に、DHA群では、在胎週数34週未満の早産児出産は有意に少なく出生体重1,500 g未満の極低出生体重児の割合は0%でした。
Carlson SE,  et al., Am J Clin Nutr., 97: 808-15, 2013.

そのほかにも、DHA・EPAを摂った妊婦から産まれた子ども(4歳児)のIQが、コーン油を摂っていた妊婦の子供に比べて有意に高かったなど、
妊娠中のDHA・EPA摂取の重要性を示す報告が増えています!

EPA・DHAの効率の良い摂取方法

青魚に豊富なEPA・DHAですが、調理方法でより効率よく摂取できることをご存じでしょうか?
実際に、脂肪の多い魚であり、日本人の食生活の定番であるサンマの調理方法によるEPA・DHAの変化について調べたところ中心部温度75℃まで調理した際のEPA・DHA残存率は、以下の通りになりました。
<DHAおよびEPAの加熱による残存率(%)>

それぞれの調理方法におけるDHA・EPAの損失の大きな原因は、リル焼きとフライパン焼きでは肉質から溶け出た脂肪による調理損失によるものであり、揚げでは揚げあぶらへの移行による物理的損失によるものだと考えられています。
 お腹にいる赤ちゃんのためにEPA・DHAを摂取したいと考えるのであれば、揚げ調理は避けた方が良さそうです🐟!
Cheung LKY, Tomita H, Takemori T. J Food Sci., 81:C1899-907, 2016.

まとめ

EPA・DHAは妊婦さんやお腹にいる赤ちゃんの健康をサポートし、健康的な妊娠期間ために必須です👶🐟
すでに妊娠中あるいは妊娠を計画している場合は、積極的に摂取していただければと思います!
しかし、水銀やダイオキシンなど有害物質の蓄積リスクも考えられるため、同一産地・同一品目を食べ続けるのは避けましょう⚠

Ingrid B Helland  et al., Pediatrics. 2003 Jan;111(1):e39-44.

妊産婦のための食事バランスガイド

この記事の著者

ゆーみん

管理栄養士

株式会社ヘルシーパス 企画開発部 / ためになる栄養講座・ブログ・お問い合わせ担当

自分自身のアレルギーと偏食がきっかけで管理栄養士を志向。大学卒業後は給食委託会社に就職し介護食からスポーツ栄養まで幅広い食に従事。

読んでいただいた皆さんに「ためになった」「面白かった」と思っていただけるようなブログづくりを心掛けています。

自己紹介ブログ ⇒ 新しいメンバーの自己紹介(管理栄養士:荒木)

栄養素の成分や働き 関連記事もご覧ください

\この記事が気に入ったらフォロー/

Facebook

最新情報をお届けいたします

ヘルシーパスのFacebookはこちら>

関連サイト